「この商品の見た目は真似されないように守れるのか」
「ロゴではなく形そのものに権利を取れるのか」
この点について、結論からいえば、商品の形は意匠権で保護できる場合があります。 ただし、どんな形でも当然に権利化できるわけではなく、意匠法の考え方に沿って、登録できる形とそうでない形があります。対象は物品等の形状等、すなわち見た目のデザインです。
この記事では、「商品の形は守れるのか」について、実務上どう考えればよいかを整理します。単に「デザインは守れます」と言うのではなく、どこが保護され、どこに注意が必要なのかまで丁寧に見ていきます。
商品の形は「見た目」として守る
まず整理しておきたいのは、商品の形を守る制度は商標権とは別だという点です。商品名やロゴを守るのが商標権であるのに対し、商品の外観、つまり形状や模様、色彩などのデザインを守るのが意匠権です。したがって、「この形がうちの商品らしさを出している」「見た目で選ばれる商品だ」という場合には、まず意匠権の検討が実務上の出発点になります。
ここで大事なのは、意匠権は「商品の機能」そのものを守る権利ではないということです。たとえば掃除機であれば、吸引するという機能やモーターの仕組みそのものは意匠権の話ではありません。意匠権で問題になるのは、需要者が見たときに把握する外観です。
つまり、商品の形を権利化したいという相談は、法律上は「その商品の外観デザインを意匠として登録できるか」という問いに置き換えて考えることになります。
どんな形でも登録できるわけではない
もっとも、商品の形であれば何でも意匠登録できるわけではありません。重要なのは新規性です。自分で作ったデザインであっても、販売開始やウェブ掲載を先にしてしまうと、原則として不利になります。公開後でも一定条件のもとで「新規性喪失の例外」という制度を使える場合はありますが、基本は公開前に検討し、できれば公開前に出願するという順番です。
もう一つ重要なのは、形が機能だけで必然的に決まるものではないか、という点です。特許庁の審査基準では、物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠は、登録を受けられないとされています。
言い換えれば、「その形でなければ機能しない」だけの形は、意匠の保護対象になりにくいということです。逆にいえば、機能を持つ商品であっても、外観として評価できる特徴があれば意匠になり得ます。この点は、家電や工具のような実用品でも意匠権が成立する理由でもあります。
ダイソンの掃除機
具体例として挙げられるのが、ダイソン テクノロジー リミテッドが権利者となっている意匠登録第1791679号です。この公報では、意匠に係る物品は「電気掃除機」とされています。出願日は令和6年(2024年)6月20日、登録日は令和7年(2025年)年2月12日であり、権利者欄にはダイソン・テクノロジー・リミテッドが記載されています。
この登録意匠でさらに重要なのは、部分意匠であることです。部分意匠とは物品の一部分の形態について意匠登録を受けようとするものです。つまり、この登録は掃除機のすべてを一律に保護するのではなく、図面の中で実線で表された特徴部分を保護対象にしているわけです。

図面を見ると、棒状の延長管やヘッドを備えたスティック型掃除機の外観であり、ダイソンらしい視覚的特徴が出ている箇所が実線で表されています。
ここから分かるのは、意匠権は商品の形全体を押さえるものではなく、外観上の特徴がどこにあるかを特定して守る権利だということです。したがって、「掃除機だから守れる」「家電だから守れない」という話ではなく、その商品の見た目のどこに創作性があるかが実務上の核心になります。
商品の形を権利化したいときの考え方
実務では、商品開発のかなり早い段階で「この形は守る価値があるか」を考えることが大切です。というのも、発売後に相談を受けるケースでは、すでにカタログ、ウェブサイト、展示会、ECサイトなどで形が公開されており、新規性の問題が出やすいからです。新規性喪失の例外制度があるとしても、最初からそれを前提にするより、公開前に検討する方が安全です。
また、商品の形を守る場面では、「全体意匠」で出すのか、「部分意匠」で出すのかも重要です。ダイソンの例が示すように、商品の全部ではなく、特徴が最も現れている一部分を切り出して権利化する方法があります。これは、模倣されやすい特徴部分が明確な商品では特に有効です。
逆に、製品全体のシルエットそのものが特徴であれば、全体意匠としての出願を検討することもあります。どちらがよいかは、どこを真似されると商品らしさが失われるか、という観点で考えると整理しやすくなります。
まとめ
商品の形は意匠権で守れる場合があるが、すべての形がそのまま登録できるわけではありません。新規性が必要ですし、機能を確保するために不可欠な形状のみでは登録が難しくなります。さらに、実務上は「どの部分を守りたいのか」を具体的に設計することが大切です。
ダイソンの例のように、電気掃除機について部分意匠として権利化された登録が存在します。商品の見た目に特徴があるなら、販売後に悩むのではなく、発売前の段階で意匠登録の可否を検討する意味は十分にあります。
