【商標審判事例解説】「FUTABAYA」商標の拒絶と登録の分かれ道:2件の審決から読み解く

今回は、2025年に審決が下された2件の商標登録に関する事例、「不服2024-13760(拒絶)」「不服2024-13759(登録)」を比較しながら、なぜ一方は拒絶され、もう一方は登録が認められたのかを深掘りしていきます。

両者は同一の出願人(株式会社二葉屋)、同一の代理人、そして同じ「FUTABAYA」の文字列を含む商標でありながら、まったく異なる結論が導かれています。この違いから、商標実務における識別性や外観の把握性の重要性が見えてきます。


事案の概要

不服2024-013760(拒絶)

  • 商願2023-119669
  • 商標構成:「FUTABAYA」「KUDAMONO」等の欧文字、果物を持つ武士の図形などの結合商標
  • 指定役務:第35類の小売・卸売関連役務(果物・飲料など)

不服2024-013759(登録)

  • 商願2023-119668
  • 商標構成:「屋葉二」「FUTABAYA」「NAKANO」「TOKYO」など、円形に配置された図形と文字の結合商標
  • 指定役務:第35類(内容は不服2024-13760と同一)

引用商標(登録第5209272号)

  • 商標構成:上段は緑色の四角図形を背景とする(図形部分)。図形内部左側は二枚の葉の図形。図形内部中央は一部欠落した白抜きのハート図形。図形内部右側は横しま模様。図形内部左下方は「FUTABAYA」の欧文字(白抜き)。下段は片仮名「フタバヤ」(緑色)。欧文字・片仮名・図形は視覚的に分離され、独立した印象を与える。「FUTABAYA」は「フタバヤ」のローマ字表記で、辞書等に載っていない造語。
  • 指定役務:第35類の小売・卸売関連役務(飲食料品、酒類、食肉、食用水産物、野菜および果実、菓子およびパン、米穀類、牛乳、清涼飲料および果実飲料、茶・コーヒーおよびココア、加工食料品)

審決の結論の違い

拒絶された審決(不服2024-013760)

本願商標
引用商標

本願商標と引用商標は外観・称呼において類似しており、役務も類似しているため、混同の恐れがある(商標法第4条第1項第11号に該当)。

登録が認められた審決(不服2024-013759)

本願商標
引用商標

本願商標は構成が一体的に把握され、「FUTABAYA」に特化して識別されるわけではないため、全体として混同の恐れはない。非類似と認定。


拒絶と登録の分岐点

ポイント①:「FUTABAYA」の見せ方

不服2024-013760(拒絶):文字「FUTABAYA」が大きく独立して配置され、他の構成要素と分離可能であったことから、商標の要部と認定された。

不服2024-013759(登録):「屋葉二」という漢字(=二葉屋)や「NAKANO」「TOKYO」などと一体的にデザインされており、全体で看板のような印象を与えると判断された。

ポイント②:一体的構成かどうか

不服2024-013760(拒絶):図形等との関連性が薄く、「FUTABAYA」の部分が他から独立して印象に残ると判断された。

不服2024-013759(登録):「FUTABAYA」は「屋葉二」のローマ字表記と認識されるため、「二葉屋という屋号」として一体的に捉えられ、視覚・観念・称呼のすべてにおいて引用商標と非類似とされた。


商標実務上の教訓

本件から得られる重要な示唆は以下の通りです。

① 商標構成の一体性は極めて重要

「似たような文字列」が含まれていても、構成要素が一体的に見えるかどうかで類否の判断が大きく変わります。図形や文字の配置、意味の連続性に注意が必要です。

② 視覚的・観念的な独立性に注意

図形や文字のデザインを工夫することで、他人の商標と異なる「観念」「外観」が生まれれば、混同を回避できます。屋号や創業地を強調する構成などは効果的です。

③ 登録を見据えた事前チェックの重要性

同一出願人が、2件の商標で一方が登録でき、一方が拒絶される結果となったように、商標の構成が少し違うだけで結果が大きく異なります。事前調査と戦略設計が重要です。


まとめ

「FUTABAYA」という同じ要素を含む2件の商標審判の比較から、商標審査における構成要素の重要性が明確になりました。

審決の違いを一言で言えば:

「文字を単に入れるだけではなく、どのように見せるか」で運命が分かれる

今後商標出願を検討する企業・個人の方は、文字の選び方だけでなく、それをどう視覚化するかにもぜひ注目してみてください。


商標の登録可否は、単なる文字の一致だけでなく、構成要素の配置や視覚的印象まで細かく判断されます。本記事でご紹介したように、「同じような名称」でも結果が大きく異なるのが商標審査の世界です。

商標の出願や拒絶対応でお困りの方は、専門的な視点から適切なアドバイスを得ることが何よりも重要です。

かいせい特許事務所では、商標出願から審判対応まで丁寧かつ迅速にサポートいたします。
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