電子化手数料とは?紙で特許・商標出願する際の注意点を弁理士が解説!

特許出願や商標登録出願など、知的財産に関する手続きはオンライン化が進んでいますが、今でも紙での提出を選ぶ方も少なくありません。ところが、紙で書類を提出する際に見落とされがちな「電子化手数料」という追加コストが存在します。

この手数料の仕組みを知らずに手続きを進めてしまうと、予想外の費用が発生したり、最悪の場合は手続が無効になることもあります。

この記事では、弁理士の視点から「電子化手数料」の内容・計算方法・納付の流れ、そして注意点をわかりやすく解説します。紙で提出する前に必ず知っておきたいポイントを押さえて、トラブルなく出願を完了させましょう。

はじめに:電子化手数料とは?

近年、特許庁への手続きはオンライン化が進んでおり、多くの申請がインターネットを通じて行えるようになっています。しかし、実は今でも特許出願や商標登録出願などの重要な手続きについては、紙での提出も可能です。

ここで注意したいのが「電子化手数料」の存在です。

紙での提出は便利な反面、追加の費用と手間が発生する可能性があります。この記事では、電子化手数料の仕組みと計算方法、手続きの流れ、注意点を弁理士の視点から詳しく解説します。


電子化手数料が必要になる理由

オンライン手続きが主流になった現代でも、紙で提出された書面は特許庁側でデジタル化(=電子化)される必要があります。
この電子化作業にかかる費用を、手続を行う出願人または代理人が負担する形で設定されたのが「電子化手数料」です。

たとえば、以下のような場合が対象です。

  • 特許出願を紙で提出したとき
  • 商標登録出願を紙で提出したとき
  • 住所変更などの各種手続書類を紙で提出したとき

オンライン手続きが可能な書類を紙で出すと、その分の電子化費用が発生します。
つまり、紙で出せば安く済むという誤解には注意が必要です。


電子化手数料の金額と計算方法

電子化手数料は、以下のように計算されます。

  • 手続1件あたり:2,400円
  • 書面1枚ごとに:800円

▼実際の計算例

① 特許出願書類が10枚の場合

2,400円(手続単位)+800円×10枚=10,400円

② 商標登録出願書類が1枚の場合

2,400円+800円×1枚=3,200円

③ 複数の手続を同時に提出した場合

それぞれの手続ごとに、手続単位ごとの2,400円枚数ごとの800円を合算します。たとえば、特許出願と商標登録出願を同時に出した場合、それぞれに電子化手数料が発生します。


電子化手数料の支払いの流れ

① 書面を特許庁に提出

出願人または代理人が書面で出願書類等を提出します。

② 特許庁から電子化の指示

特許庁は、提出された書面を電子化するよう、登録情報処理機関(一般財団法人工業所有権電子情報化センター)に対して指示を出します。

③ 納付案内の送付

登録情報処理機関から、出願人や代理人に電子化手数料の納付案内が郵送されます。
書面の提出日から1〜2週間程度で、納付書などが届きます。

④ 電子化手数料の支払い

納付案内を受け取ったら、30日以内に所定の金融機関へ振り込みを行います。これにより、正式に電子化手数料を納付したことになります。


電子化手数料を払わないとどうなる?

ここが非常に重要なポイントです。

電子化手数料の納付がされない場合、提出した書類は「却下」となります。つまり、その手続自体が「初めから無かったこと」として処理されてしまいます。

これは特許や商標など、審査のタイミングが重要な手続において、致命的な問題となり得ます。

例えば、商標登録出願で先に他社が似た商標を出していた場合、提出日が無効になってしまうと出願順位で不利になります。

POINT:電子化手数料は絶対に期限内に納付を!


電子化手数料を避けるには?

結論から言えば、「オンライン手続を活用すること」が最善の方法です。
現在、「特許庁の電子出願ソフト(J-PlatPat連携)」などのツールを使えば、比較的簡単にインターネット経由での出願が可能です。

さらに、以下のようなメリットもあります:

  • 電子化手数料が不要
  • 提出日が明確に記録される
  • 進捗確認や証拠保全が容易

もちろん、オンライン手続きには環境整備や多少の操作スキルが求められますが、手間とコストの観点から見れば紙で出すよりもはるかに合理的です。

ただし、オンライン手続きには電子証明書が必要です。
電子証明書の取得には2~3万円かかります。オンライン手続きは手続き自体は簡単ですが、そのための準備と費用がかかります。
よって、電子化手数料が発生したとしても、特許庁に紙で提出したほうが費用対効果が高いという場合があります。


まとめ:電子化手数料の知識で損しない手続を!

紙での提出は柔軟性がある一方で、「電子化手数料」という見落としやすいコストがかかります。
1件ごと+1枚ごとに課金される仕組みを理解しておくことで、無駄な出費や手続ミスを回避することができます。

ほとんどの特許事務所ではオンライン手続きを行っていますので、特許事務所に依頼すれば基本的に電子化手数料は必要ありません。

特許や商標出願においては、ほんの少しの知識不足が大きな損失につながることもあります。ぜひ今回の内容を参考にして、適切な方法で手続きを進めてください。

要約
  • オンライン手続き可能な書類を紙で提出すると「電子化手数料」が発生する
  • 電子化手数料は「1手続2,400円」+「書面1枚につき800円」
  • 手続き後、1〜2週間以内に納付書が送付され、30日以内の振込が必要
  • 納付しないとその手続きは「却下」となり無効扱いに
  • 対策は「オンライン手続きの活用」がベスト、ただし電子証明書が必要

電子化手数料をはじめ、特許・商標に関する手続きには細かなルールや期限が多く、ちょっとした見落としが大きなトラブルに発展することもあります。

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