商標を「使う」とは?法律上の意味をご存知ですか?
ビジネスの現場では、自社のブランド名やロゴを商品や広告に使うのはごく自然なことです。しかし、それらの行為が商標法上の「使用」に該当するかどうかをご存知でしょうか?
実は、商標の「使用」は単にロゴを貼るだけでなく、販売方法・サービス提供・広告表示・ネット上の表現など、非常に幅広く定義されています。
知らずに使ってしまうと、他人の商標権を侵害してしまうリスクもあるため、注意が必要です。
この記事では、商標法で定められた「商標の使用」の定義について、実例を交えながら分かりやすく解説します。
自社の商品やサービスに商標をどう扱うべきか、不安をお持ちの方はぜひご一読ください。
はじめに:商標を「使う」とはどういうこと?
「商標の使用」と聞いて、多くの方が「商品にロゴを付けること」や「広告に名前を載せること」などを思い浮かべるでしょう。しかし、商標法上の「使用」はそれだけに留まりません。
商標権者(もしくはその許諾を受けた者)は登録商標を使う権利がありますが、逆にその権利がない者が勝手に使用した場合、商標権の侵害に該当する可能性があります。
では、法律上「使用」とされる行為には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
商標法では第2条第3項において、10種類の使用形態を明確に定義しています。
この記事では、それぞれの行為について具体例を挙げながら解説していきます。
商品または包装に商標を付ける行為(第2条第3項第1号)
最も基本的な使用方法です。
- 例:バッグやTシャツなどの商品に商標(ロゴ)を直接印字・縫い付ける
- 例:商品の包装(箱・袋など)に商標を記載する
このような「付する行為」は、典型的な商標の使用です。
商標を付した商品を販売・展示・輸出入・ネットで提供する行為(第2号)
単に商標を商品に付けるだけでなく、それを市場に出す行為全般が含まれます。
- 店頭での販売や引き渡し
- 店内に陳列して販売促進する行為(展示)
- 商品を輸出・輸入する行為
- インターネット通販で販売する行為
たとえインターネット上だけでの販売でも、これらは全て「使用」に該当します。
役務提供に関連する物品に商標を付ける行為(第3号~第6号)
サービス業においても、商標の使用は重要です。第3号から第6号では、サービス(役務)の提供に関連する物品への表示が対象となります。
第3号:サービス利用者が使う物に商標を付ける
- 飲食店で使用するグラスやテイクアウト容器に商標を表示
- レンタサイクルの自転車に商標を貼る
第4号:商標付きの物を用いてサービスを提供する
- ロゴ入りグラスでドリンクを提供
- 商標のあるレンタサイクルでサービスを実施
第5号:サービスに使う物を展示する
- コーヒーサーバーや食器に商標を付けて店内に展示
第6号:サービス後の商品に商標を付ける
- クリーニング済みの衣類にロゴ入りシールを貼って返却する
これらもすべて、商標の「使用」に含まれます。
映像や音による商標の使用(第7号・第9号)
最近では、映像や音での商標の使用も広がっています。
第7号:映像面への表示
- テレビCMやネット動画で、商標を画面に表示して商品・サービスを紹介する
これは、映像を通じた「役務の提供」に該当します。
第9号:音の商標を流す
- 店舗の中で商標音(ジングルや効果音)を流す行為
音が商標として登録されている場合、これも商標使用に該当します。
広告や取引書類での商標の使用(第8号・第10号)
第8号:広告・価格表・取引書類への商標の付与
- チラシ、パンフレット、請求書などに商標を記載する
- ウェブ広告やSNS投稿に商標を表示する
情報媒体を問わず、広告に商標を表示する行為も「使用」です。
第10号:政令で定められるその他の行為
新しいタイプの商標(色彩、位置、動きなど)が登場する中で、法律の補完として政令で「使用」とされる行為もあります。
まとめ:商標の使用には思った以上に多くの形態がある
商標の「使用」と一言で言っても、その形は多岐に渡ります。商標法で定義された10の行為は、どれも実務上よく問題になるものです。
また、登録商標を使用する権利を持たない者が、これらのいずれかの行為を行えば、商標権の侵害とされ、損害賠償請求や差止請求を受ける可能性もあります。
弁理士からのアドバイス:トラブルを防ぐために
- 自社が使っているロゴや名前が他人の登録商標と似ているか心配
- 第三者から商標侵害の警告を受けた
- 他人の商標が自社の商品に使われている気がする
このような場合には、一人で判断せず、専門家である弁理士に相談することを強くおすすめします。
商標の使用に関する問題は、早期対応が命です。放置すれば法的リスクが高まりますし、事業への影響も大きくなります。
不安なことがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
商標の「使用」は非常に広範で複雑なため、知らず知らずのうちに他人の権利を侵害してしまうケースも少なくありません。
また、自社の登録商標が第三者に使われている場合でも、どのように対応すべきかは状況により異なります。
こうした判断は、ご自身で行うよりも専門知識を持つ弁理士に相談するのが最も確実です。
商標の使用に関するご質問やお困りごとがあれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。
あなたの事業を法的リスクから守るために、しっかりとサポートいたします。