【商標登録表示】RマークとTMマークの違いと正しい使い方を弁理士が解説!

商標の世界では「登録されているか否か」を示すマークや記載が、ブランド保護において極めて重要な意味を持ちます。

本記事では、商標登録表示とは何か、そして「Ⓡ(Rマーク)」や「™(TMマーク)」の違いと使い方の注意点について、商標専門の弁理士の視点から詳しく解説していきます。

商標登録表示とは?表示の法的根拠と意味

日本の商標法では、登録された商標について「その商標にその商標が登録商標である旨の表示を付するように努めなければならない」と定められています(商標法第73条)。この条文は努力義務(訓示規定)であり、表示しなかったからといって罰則が課されるわけではありません

でも、登録商標の正しい表示形式があります。

商標法施行規則第17条によれば、正しい商標登録表示の形式は以下の通りです。

登録商標第〇〇〇〇号

これは、日本の法令に準拠した正式な表記です。しかし、実際のビジネス現場ではこのような表記を見かける機会はそれほど多くありません。


実務でよく見る「Ⓡマーク」とは?

日常生活や商品・サービスの広告において、もっともよく見かける商標表示のひとつが「○の中にR」のRマーク(Registered Trademark)です。

このRマークは、実はアメリカ合衆国の特許商標庁(USPTO)に商標が登録されていることを示しています。具体的には以下のような意味を持ちます。

  • “Registered in U.S. Patent and Trademark Office”
  • “Reg. U.S.Pat. & Tm. Off.”

つまり、このRマークはアメリカ国内での登録商標を意味する記号であり、日本における法的な登録商標表示とは異なる点に注意が必要です。

アメリカの実務では、Rマークの注意点があります。

アメリカでは、Rマークを表示していないと、損害賠償請求が制限される可能性があります。自社の商標を他人に使用された場合でも、Rマークの未表示を理由に損害賠償が認められない可能性があるのです。


虚偽表示のリスクと日本でのRマークの扱い

日本において、Rマークの使用は義務ではありません。しかしながら、登録されていない商標に対してRマークや「登録商標」といった表示を行うと、虚偽表示とみなされる可能性があります。

商標法第74条および第80条では、虚偽表示について次のような罰則が設けられています。

登録されていない商標に対して「登録商標」と誤認させる表示をした場合
3年以下の懲役または300万円以下の罰金

これは、日本独自の規定というわけではなく、多くの国で同様の虚偽表示に対する罰則規定が存在します。


TMマーク・SMマークとは?その意味と使い方

Rマークと並んでよく見かけるのが「™(TMマーク)」と「℠(SMマーク)」です。

  • TMマーク(Trademark):主に商品に付される標章
  • SMマーク(Servicemark):主にサービスに付される標章

これらのマークは、登録商標でなくても自由に使えるという点が特徴です。出願中である必要もありませんし、登録を受けていなくても表示可能です。

ただし注意が必要です。

TMやSMの表示をしていたとしても、その表示自体が法的効力を生むわけではありません。第三者から「商標権侵害」として訴えられるリスクは残りますし、防御力のある法的権利とはなりません。


実例で見る商標の表記とマークの使い分け

それでは、実際の企業の商標表示を見て、RマークやTMマークの使い分けを確認してみましょう。

1. Lenovo(レノボ)

  • TM表記:Lenovo™
  • 登録商標:登録第4719475号、国際登録第1299513号
商標登録第4719475号
国際登録第1299513号

→ TM表記では「L」が大文字で、登録商標では小文字やフォントの違いが確認できます。

2. Google(Android)

  • TM表記:Android™
  • 登録商標:「ANDROID」(商標登録第5132404号)

→ 登録商標はすべて大文字。TMの方は「A」が大文字、以降は小文字。

3. Dyson(Supersonic)

  • TM表記:Supersonic™
  • 登録商標:国際登録第1301389号
国際登録第1301389号

→ こちらも同様に、登録商標はすべて大文字。TMは一部だけ大文字の形式。

4. Starbucks(スターバックス)

商標登録第5232548号

スターバックスのロゴには図形商標とTMマークが併記されているものがあり、図形商標にもTMマークを用いるケースがあることが分かります。


商標表示を正しく使い分ける意義

企業がRマークとTMマークを使い分けている背景には、以下のような目的があります。

  1. 商標の普通名称化(generic化)を防ぐため
  2. 他社からの侵害行為に対する警告
  3. マーケティング戦略の一部としての演出

実際に登録されていない標章にTMマークを付すことで、一定のブランディング効果や抑止力を持たせている企業も存在します。

ただし、誤って虚偽表示に該当してしまうと、刑事罰の対象にもなり得るため、使い方には十分注意が必要です。


まとめ:商標表示はブランド戦略の鍵

商標登録表示は、単なる「飾り」ではなく、法的根拠を持ち、ブランド保護と価値訴求に直結する重要な要素です。

  • 登録されていれば「登録商標第〇〇〇〇号」や「Ⓡ」を表示することが可能
  • 登録していない段階でも「™」「℠」で自己主張は可能(ただし法的保護は薄い)
  • 虚偽表示には厳しい罰則があるため要注意

ブランドを守るためにも、表示の意味と法的な位置づけを正しく理解し、適切な使い分けを心がけましょう。


商標の表示方法やRマーク・TMマークの使い分けは、ブランド戦略や法的リスクにも直結する重要なポイントです。

「自社の商標表示はこのままで大丈夫?」「Rマークを使っても問題ない?」といったご不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。