ビジネスを始めるとき、多くの人が「会社の名前(商号)」や「ブランド名(商標)」について考えます。
しかし、商号と商標は似ているようで全く別の概念であり、その違いを正しく理解していないと、後々トラブルに発展することも少なくありません。
たとえば、せっかく考えた社名を登記しても、その名前で商品を販売したら他人の商標権を侵害していた!というケースもあるのです。
この記事では、「商号」と「商標」の違いを法律面からわかりやすく解説し、
さらに「標章」や「商標登録」の重要性、そしてビジネスを守るための具体的な対策まで詳しくご紹介します。
会社設立前後の方や、商品・サービス展開を考えている方は必見の内容です!
商号とは何か?──法律上の位置づけと登記制度
ビジネスを始めるにあたり、最初に必要となるのが「商号」の決定です。
商号とは、会社や個人事業主が営業活動を行う際に使用する「名称」のこと。
これは、いわば“企業の顔”とも言える存在であり、商法および会社法に基づき登記されます。
日本における商号の扱いは、商業登記法第27条によって明確にされています。
この条文では、「同一の商号であっても、所在地が異なれば登記できる」とされています。
つまり、全国には同じ名前の会社が多数存在することが合法的に可能なのです。
たとえば、あなたが「ABC株式会社」という商号を登記したとしても、他県にまったく同じ商号の会社が存在することは問題ありません。
この点が、次に述べる「商標」と大きく異なるポイントです。
商標とは何か?──標章との違いと商標権の仕組み
一方、「商標」は、商標法第2条により定義されている「商品またはサービスに使う識別マーク」です。
ここで出てくる重要な概念が「標章(ひょうしょう)」です。
標章とは?
標章とは、人が視覚や聴覚などで認識できるもので、次のようなものが含まれます:
- 文字(例:「SoftBank」)
- 図形(例:Appleのリンゴマーク)
- 記号(例:「∇」)
- 色彩
- 音(サウンドロゴ)
- その他、これらの組み合わせ
これらの標章を「商品やサービスに使用すること」で、それが商標となり、商標法により保護される対象になります。
商標を保護するためには、特許庁に商標登録出願を行い、審査に合格する必要があります。
登録されると、商標権という排他的権利が発生し、他者が無断でその商標を使うことができなくなります。
重要なのは、商標権は「全国一律」に発生するものであり、登録された商標は全国どこでも独占的に使用できるという点です。
商号と商標の違い──混同しやすいポイントを解説
ここで、商号と商標の違いを整理しておきましょう:
項目 | 商号 | 商標 |
---|---|---|
定義 | 会社や事業者の名称 | 商品やサービスの識別マーク |
根拠法 | 会社法、商業登記法 | 商標法 |
登録機関 | 法務局 | 特許庁 |
保護範囲 | 登記所在地のみ | 全国一律 |
権利の性質 | 名称の使用を公示する役割 | 使用を独占する排他的権利 |
登録の有無 | 登記で完了 | 登録しなければ権利発生しない |
商号を登録しただけでは、商品名やブランド名としての保護は受けられません。
また、商号と同一の文字列を他人が先に商標登録していた場合、その使用が商標権侵害に該当する可能性があります。
商号と商標のリスク──登録の優先順位とトラブル事例
実際のビジネスでは、商号と商標の混同が原因でトラブルに発展するケースも少なくありません。
事例:商号が商標権を侵害していた!
たとえば、ある会社が「Kaisei電機株式会社」という商号を登記したとします。
しかし、別の企業がすでに「Kaisei」で家電製品を展開し、商標登録を済ませていた場合、その名称を家電製品に使うと商標権侵害にあたる可能性があります。
この場合、商号そのものが商標として使えない、あるいは訴訟リスクを抱えることになり、ビジネス継続に大きな支障をきたすことになります。
商号を使う前に、商標登録の確認を!
商号を決める際には、以下のようなチェックが重要です:
- 特許庁の商標検索(J-PlatPat)で類似商標があるか調べる
- 弁理士に相談する
- 将来的に商標登録をする可能性を見越して名称を選ぶ
戦略的な商標登録のすすめ──ビジネスを守る権利の話
自社の商品やサービスを安定的に販売し続けるためには、早期に商標を登録して商標権を取得することが非常に重要です。
商号が自分のものであっても、商標権を持っていなければ他人に利用を制限されてしまう恐れがあります。
逆に、商標権を取得していれば、ブランド保護・模倣防止・ライセンス収益といった多くのメリットを享受できます。
商標登録の戦略的メリット
- 商品名・サービス名を独占的に使用できる
- ブランド価値の保護・向上
- ライセンス収入の可能性
- 販売代理店への安心提供
- 投資家・取引先への信頼感アップ
つまり、単なる「名前の登録」にとどまらず、企業の無形資産としての価値を高めるのが商標登録です。
まとめ
「商号」は法務局に登記する名称であり、ビジネス上の「会社名」を意味します。
一方「商標」は、商品やサービスを識別するためのマークであり、特許庁で登録されることで排他的な商標権が発生します。
同じ名前であっても、商号と商標では保護の範囲と法律的効果がまったく異なります。
したがって、商号を登録するだけでは不十分であり、事業の継続性とブランドの独占性を守るためには、商標権の取得が戦略的に不可欠です。
「この商号を使って大丈夫?」「商標登録って難しい?」そんな疑問がある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。
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